広島工業大学

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2020年度入学宣誓式 式辞

皆さんの学生生活を応援するように、草木の緑は一段と深くなり、花々は鮮やかな色をつけ、新しい挑戦を始める良い季節になりました。本日、ここ広島工業大学に集われた令和2年度入学生の皆さん、一年遅れてのお祝いの言葉となりますが、ご入学おめでとうございます。このような形ではありますが、人生の節目である入学宣誓式を挙行できたことを大変嬉しく思います。また、本日は保護者のご臨席は叶いませんでしたが、ご子女のご入学、誠におめでとうございます。広島工業大学を代表して、心よりお慶びを申し上げます。

昨年一年間は、新型コロナウイルスという未知のウイルスとの戦いで全人類が試された年でした。皆さんも入学当初から大学キャンパスに入ることもできず、日々不安に感じながら過ごしてきたのではないかと思います。また、授業もオンラインでの実施となるとともに、大学行事も延期や中止になるなど、本当に大変だったと思います。しかし、皆さんの協力のおかげで、なんとか学びをとめることなく、一年を終えることができました。この場を借りて、皆さんの協力と努力にお礼を申し上げます。

既にいろいろな場面で聞いていると思いますが、広島工業大学は、建学の精神『教育は愛なり』と教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』という2つの教育理念の下、教育にあたっています。

この建学の精神『教育は愛なり』という言葉は、「愛」すなわち「想い」を持って教育にあたることを表しています。私たち教職員は、一人ひとりにしっかりと向き合い、どのように支援できるのかを真剣に考える、そのような「想い」を常に持ち、皆さんの可能性を信じて教育にあたっています。

また、教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』という言葉には、高い倫理観を持ち、何事にも感謝をしながら、真面目に努力し、社会に奉仕する人間になってもらいたいという願いが込められています。私たちは、皆さんがそのような技術系人材となり、社会に巣立っていくよう支援していきます。

さて、昨年は新型コロナウイルス感染症で社会も大きく変化しました。

数年前、これからは予測困難な時代となり、その時代を力強く生き抜くために準備しなければならないと言われていました。しかし、昨年の新型コロナウイルスの感染拡大で、その予測困難な時代が猛スピードで私たちの目の前にやってきてしまいました。現状をしっかりと分析し、これまで経験したことがない課題に対して、どのような答えを出せば良いのか、全てが試行錯誤の連続でした。それは今も続いています。皆さんは、これから、このような時代を生きていかなければなりません。

そのための力を身に付けるのが大学です。専門力と言われる専門的な知識や技術は、未知の課題を解決する上で必ず必要となるものです。また、世の中の課題は一つの専門分野の知識や技術だけでは解決できないものばかりです。多くの物事に興味を持ち、自分のもつ知識の幅を広げることにも時間を費やしてみてください。

皆さんには、知識の幅を広げるために、本を読むことをお勧めします。自分の専門とは異なる分野の本を読んでみたり、興味がなく手にしていなかったような本を自ら選び読んでみてはどうでしょうか。きっと、人間としての幅も広がり、皆さんの将来にとって有益なものになるに違いありません。

また、課題を解決して、新しい何かを創造するためには仲間も必要です。他者とともに意見を交わし、良いものを作り上げるためには、相手のことを考えながらも自分の思いを相手に伝えるアサーティブ・コミュニケーションが大切です。このようなコミュニケーション力は教科書を読むだけでは身に付かず、さまざまな経験から得られるものです。大学では、仲間とともに、さまざまなことに挑戦する学生を支援しています。コロナ禍の中で難しいこともありますが、小さなことでも良いですので、ぜひ、挑戦してみてください。

皆さんには、これからの新しい社会を創り出し、そして、その社会で活躍してほしいと思っています。そのためのキーワードの一つに、SDGs、すなわち、持続可能な開発目標があります。これは、持続可能でより良い世界をめざす社会・経済・環境の各側面を統合した国際目標です。2015年に国連サミットで採択されて以来、世界各国でその取り組みが本格化していますが、これは、地球上の「誰一人取り残さない」ことを理念とした普遍的な目標で、開発途上国・先進国を問わず、全世界の人々がそれぞれの立場で取り組むことが求められています。

皆さんには、課題と向き合うときに常にこのSDGsを意識してほしいのです。これまでは、技術先行型の社会が豊かな社会を創り上げると信じられてきました。実際、社会は発展し暮らしも豊かになりました。しかし、そこにはさまざまな課題、そして、犠牲を生み出していたことに、世界中が気づきました。近年大きな被害を引き起こす原因になっている気候変動を例に考えてみても、私たちは、今の暮らしをそのまま続けていてはいけないと感じられるのではないでしょうか。

今、その危機を脱しようと、世界中が動き始めています。広島工業大学も、SDGs推進センターを立ち上げ、大学をあげて、教職員、そして、学生の皆さんとともに、持続可能な社会の創造に取り組もうとしています。皆さんにも、高い意識を持って、一人ひとりができることから始めることを期待します。

最後に、専門的な知識や技術をしっかりと学ぶとともに、自立した人間として社会で力強く生きていくための総合的な力である人間力、さらには、先行きの見えない未来を他者と協働して切り拓く力である社会実践力を身に付け、高い倫理観を持ったこれからの社会を担う技術系人材として活躍できる人になることを楽しみにしています。

入学して2年目が始まりましたが、これからも健康に十分注意しながら充実した学生生活を送られることを祈念して、私の式辞といたします。

令和3年4月10日
広島工業大学 学長  長坂康史