色とりどりの春の花々が鮮やかに咲き誇り、皆さんの新しい門出を祝っているかのようです。本日、ここ広島工業大学に期待に胸を膨らませて、入学して来られた新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、ご臨席の保護者の皆様、ご子女のご入学、誠におめでとうございます。広島工業大学を代表して、心よりお慶びを申し上げます。

広島工業大学の学生となった皆さんに、本学の２つの教育理念を紹介します。

一つ目は、建学の精神である『教育は愛なり』です。「愛」すなわち「想い」を持って教育にあたるということを表しています。私たち教職員は、皆さん一人ひとりにしっかりと向き合い、どのような支援ができるかを真剣に考える、そのような「想い」を常に持ち、皆さんの可能性を信じて、教育にあたっています。

二つ目は、教育方針である『常に神と共に歩み社会に奉仕する』です。この言葉には、高い倫理観を持ち、何事にも感謝をしながら、真面目に努力し、社会に奉仕する人間になってもらいたいという願いが込められています。私たちは、皆さんがそのような高い意識を持った技術系人材となり、社会に羽ばたいていけるよう支援していきます。

さて、三年前、突然、世界中を混乱の渦に巻き込んだ新型コロナウイルス感染症は、人々の願いとは裏腹に、短期間では終息せず、私たちの身近な暮らしから世界経済に至るまで大きな打撃を与えました。その結果、否応なく誰も経験したことのない状況を私たちは今、突きつけられています。その大きな変化とそれに伴う混乱と不安の中、皆さんは、この三年間、自身の未来を切り拓くため、懸命に努力してきたことと思います。その努力が実り、広島工業大学の学生となった皆さんは、今、未来へと続く大きく新しい扉の前に立っています。

しかし、その扉の向こうに広がる世界はどうでしょうか。多くのことが今までどおりとはいかず、社会全体の均衡が崩れ、ますます不安定になっていると感じます。また、世界中が一つになって取り組まなければならない重大な問題に対しても、他者の意見を聞くこともなく、支配という一方的な手段をとる事態が、残念ながら繰り広げられています。

このような社会情勢の中、入学された皆さんには、大きく変化しつつある不確実な社会を力強く生きるために、これまで誰も経験したことのない課題を仲間とともに解決していく力を身に付けることが必要とされます。

そのため、広島工業大学では、次に挙げる３つの力を重視して、教育プログラムを展開しています。まず、学科や専攻で学ぶ専門的な知識や技術である「専門力」、社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力である「人間力」、そして、未知の社会課題を自ら発見し、仲間とともに解決する力である「社会実践力」です。新入生の皆さんには、この「専門力」「人間力」「社会実践力」を意識的に身に付けるような行動をしてほしいと思います。

日々の授業で専門的な学びを深めるだけでなく、クラブ・サークル活動や、国際交流活動など、大学が提供するさまざまな活動や制度なども利用して、積極的に経験を積んでください。さらに、国際平和文化都市である広島で学ぶ意義を考え、多くの異なる文化に触れ、その文化を理解しながらお互いを尊重し、ともに生きることの大切さも学んでほしいです。自ら考え経験し、また、さまざまなことに挑戦することで充実した大学生活を送ることを期待しています。

ところで、この５月から新型コロナウイルス感染症が２類から５類に引き下げられます。これに伴って、これまであった規制が緩和され、社会はまた大きく変化することになるでしょう。そのような中、大学生活をスタートする皆さんは、新しいことに対するワクワクした気持ちと、そのような変化についていくことができるか不安になる気持ちの両方が心を占めていることと思います。

その不安を解消するためにも、新しい人間関係を構築したい、ワクワクする世界を新しい仲間とともに作り上げたいと思ってはみるものの、初めての環境で新しい人間関係を作っていく勇気と労力を考えただけで、尻込みしてしまう人もいるかもしれません。そのうえ、新型コロナ禍の環境下で、私たちの生活でも一般的になった非接触型コミュニケーションが増え、人間同士のリアルな関係が軽視されようとしています。

しかし、皆さんには、ぜひ、同じ学科やいろいろな場面で同じグループになった人など、これから多くの時間を過ごすであろう周りの人に、少しだけ勇気を出して、声をかけてみてほしいのです。その一声から広がる関係が、皆さんの未来を支えるエネルギーになると考えるからです。

最後に、私たちは、皆さんが広島工業大学で「専門力」「人間力」、そして、「社会実践力」を身に付け、高い倫理観を持ったこれからの社会を担う技術系人材として活躍できる人になることを楽しみにしています。

皆さんが、健康に十分注意しながら、充実した学生生活を送られることを祈念して、私の式辞といたします。

令和5年4月3日
広島工業大学　学長　　長坂康史