情報工学科
塚本 壮輔
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
-
○医用工学
○医用福祉工学
○画像計測
- 【担当科目】
- 医用工学概論 、 電子工学・同演習・同実習 、 計測工学 、 アルゴリズム・プログラミング・同演習 、 マイコンプログラミング実習 、 画像処理 、 医用画像計測工学 、 医療福祉機器設計
- 【研究テーマ】
- 1.非接触生体信号計測、医療安全にかかるシステム開発 ほか
- 【ひとこと】
大学で経験したこと、見たこと、そして学んだことの全てが、将来技術者となる皆さんの役に立ちます。「あ!」という新発想も、要素要素はごくあたりまえのことが多いのではないでしょうか。その要素(パーツ)をより多く集めると、より多くの発想(組み合わせ)ができるようになります。勉学と遊びの双方において、できるだけ多くのチャレンジをしてもらいたいと思います。
研究紹介
塚本 壮輔TSUKAMOTO Sosuke
情報学部 情報工学科 准教授
医療現場で起こる機器のトラブルを、工学的アイデアで解決
PROLOGUE
医療現場に並ぶ多種多彩な医療機器。それらが正常に稼働することで医師も看護師も治療に専念できます。もし、この医療機器でトラブルが発生したら。想定外の操作で不具合を起こしたら。問題が起きないよう現場では細心の注意が払われていますが、それでもインシデントは発生します。そういった事態を防ぐため、知恵を巡らしているのが塚本先生。医療現場の改善に役立つさまざまなアイデアを具現化しています。
機器の電源ケーブルが抜けるのは問題。でも抜けないと、さらに大きな問題
医療現場では、ささいな不注意がトラブルを引き起こす場合もあります。医療機器のいくつかは、移動しやすくするためラックに設置されていることがあります。そのラックを患者に近づけようと移動させたとき、機器のプラグとコンセントをつなぐケーブルがピンとはってしまうと、どうでしょう?医療従事者がひっかかってつまずくのもまずいですが、処置中に機器のケーブルが抜けてしまうのも問題です。
これを防ぐため、ある病院ではプラグをコンセントにテープで止め、ケーブルが抜けないようにしていました。しかしこれはテープを貼る手間もかかりますが、引っ張る力によってはテープは剥がれてしまいます。もっと工学的に解決したいと学生に話すと、ある学生がコンセントにカラビナという固定具をつけ、壁の金具に引っ掛けて固定する方法を考案しました。これならケーブルは、確かに抜けません。
しかし引っ張ってもケーブルが抜けない場合、どうなるでしょう?ラックごと医療機器が転倒し、別の大きな事故を引き起こすかもしれません。これはケーブルが抜けるよりひどい状態です。「どう引っ張っても抜けない」ようにするのも、医療現場では適切な解とは言えないのです。
そこで、プラグのコンセントへの挿入状態を監視し、使用中の機器のプラグがコンセントから離れそうになるとアラームで警告する仕組みを作りました。これならケーブルがピンとはってプラグが抜ける、といった事態は防げるのではないでしょうか。
医療機器の利便性向上が、想定外のトラブルをもたらす
医療機器が「ボタンさえ押せば動く」というくらい高度自動化することで発生する可能性のあるトラブルもあります。身近な例では、医療機器ではありませんが、例えば点滴。点滴を何度も経験していると、患者さんも操作方法を見て覚えてしまいます。そして早く点滴を終わらせようと、勝手に操作して点滴のスピードを上げる人がいるのです。点滴は、想定以上のスピードで入っていくと、体調を崩す可能性があります。
医療機器は、医療従事者に操作しやすいよう工夫されていますが、だからと言って患者さんが操作できてしまうのは問題です。そこで医療従事者がもつIDカードに着目し、それを持つ人が近づいたときしか操作できないようにする仕組みを作りました。
また、各種機器が出すアラーム音の認識システムも作っています。機器は必要な場合に様々な音を出しますが、緊急を要するものと注意を促すものが混在して鳴っています。広い場所で遠隔に医療従事者がいる場合、その人にアラーム音が届くように音量を大きくすると、そのアラームが鳴っている機器の周囲にいる患者さんにとってはとても不快となります。そこで特定のアラームに反応させ、その音を検知したら医療従事者に電波を飛ばすのです。こうすればいたずらに音量を上げる必要もなく、緊急性の高いアラームを選択的に伝えられます。
ゼミで得た工学的な知識が、医療現場で活きる
既存の医療機器に機能を付加する場合、機器内部に別の機構を装着したり、後付けした機器に電力を供給してもらう、などの改変はできません。これは、医療機器の安全性を担保するために必要なこと。あくまで外付けの形で提供できなければなりません。
いろんな制約がある中でのものづくりではありますが、ゼミの学生たちは興味を持って取り組んでいます。やり始めて実際に手を動かしてみるとのめり込む学生も少なくありません。臨床工学技士として現場で働くようになって「あの時やった研究の意味が、本当に理解できるようになりました」とか「研究をベースに、医療機器にこんなプラスアルファがあるといいのに、とメーカーの人に提案しています」と報告に来てくれる卒業生の姿を見ると、ゼミの研究が彼らの中で生きているのだな、と感じます。
今後も学生たちと一緒にいろんなテーマに挑戦し、患者さんや医療従事者のみなさんの役に立てる成果を提案していきたいですね。