広島工業大学

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TECH SESSION INTERVIEW

VRアーティストせきぐち あいみさん
AIMI SEKIGUCHI

VRアートを通じて
人々の想像力を解放していく

メタバース(仮想空間)の中で自由自在に3Dアートを生み出すVRアーティスト。現実にはない魅力あふれる世界に人々を誘い、新しい価値や体験を届ける、新時代の担い手です。今回はVRアートの第一人者として国内外で活躍するせきぐちあいみさんに、VRアートやメタバースの可能性について伺いました。

失敗を恐れず行動したことで世界が広がった

―― VRアーティストとして活動するようになった経緯を教えてください。

VRアーティストになる前はYouTuberとして活動しており、3Dペンを使った造形物を制作していました。あるとき、取材の一環としてVRを体験する機会をいただいたのですが、仮想空間に立体物が次々と生まれていく様子を見て、「まるで魔法のようだ!」と感動したんです。当時はVRでアート制作をしている人はいなかったのですが、この分野は今後絶対に盛り上がっていくだろうと確信し、すぐにVRアーティストとして活動することを決めました。

―― 当初はどのような活動をされていたんですか?

初めは試行錯誤しながら取り組んでいたので、「人前で発表してもいい」と思えるような作品がなかなか完成しなかったんです。でも、友人に作品を見せたときに「こんなに面白い表現は見たことがないから、すぐに発表すべきだ」と背中を押され、思い切ってSNSで公開してみました。すると予想以上に大きな反響があり、それ以来VRアートに関する仕事のオファーが届くようになったんです。

―― アート制作をするうえで、日頃から意識して取り組んでいることはありますか?

SNS上で評価をいただいてからは、自分の中でボツにした作品や、見せたくないと躊躇していた作品も、包み隠さず公開するようにしています。もし評価されなかったときは傷つくかもしれません。でも、それ以上にチャンスが広がるというメリットのほうが大きいと思っています。それに、他者の反応を伺ったうえで改善を重ねていくほうが、成長速度が圧倒的に早いです。
また、行動力とスピード感も大切にしてきました。失敗を恐れずに、次々とやりたいことに挑戦してきた結果、自分に不足していた技術や知識が後からついてきたと感じています。

VRアートやメタバースには無限の可能性がある

―― VRアーティストになってから、特に印象に残っているエピソードを教えてください。

コロナ禍以前から、世界各国で3Dライブペインティングを実演させていただいたのですが、どの国でも新鮮な反応を得ることができ、多くの方から「感動した」と言っていただけたことで、「VRアートには言葉や国の壁を越える力がある」と確信を得ることができました。
また、出品したNFTアートが落札されたことも印象に残っています。それまではクライアントワークが主な収入源だったのですが、自分のアートが市場で価値を認められたことで、アーティストとしてスタートラインに立てたのだと強く実感できました。こうしてデジタルアートの過渡期に居合わせられたことはとても幸運ですし、嬉しく思っています。

―― せきぐちさんが考えるVRアートの魅力を教えてください。

クリエイターとしては、今まで存在しなかった別の世界をつくることができるという点が、とても面白いと思っています。絵を描くというよりも、絵の世界の中に人を連れていくことができる、という感覚です。また、鑑賞者にかつてない体験を提供することで、その人の想像力を解放することもできると考えています。
そして、VRアートの表現の場でもあるメタバースにも、さまざまな魅力があります。

―― 具体的にはどういったところに魅力があるのでしょうか?

さまざまな社会課題の解決に貢献できる可能性がある点です。たとえば国や地域を超えてさまざまな教育や体験を提供することができれば、教育格差をなくすことも不可能ではありません。また、家にいながら世界中を旅行できるような体験を提供できたなら、移動にかかるエネルギーを削減でき、高齢者や体が不自由な方にも豊かな時間を届けることができます。無限の可能性があるメタバースには、ぜひ注目していてほしいです。

やりたいことは全部やる気持ちで

―― せきぐちさんがアートの分野に興味を持ったきっかけはなんだったんでしょうか?

中学生の頃に、地域のイベントで演劇を体験したことがきっかけです。当時の自分にとって、学校という小さなコミュニティが世界のほとんどだったのですが、その中でちょっと嫌なことがあると「自分はダメだ」と落ち込み、自分の価値を決めつけてしまっていました。そんな私にとって、校外の人たちとコミュニケーションしながら演劇をつくり上げたり、演じた役に対していろんなリアクションがあったりといった体験は、とても新鮮だったんです。そのときから、アートや表現を通じて人を喜ばせたいという気持ちが芽生え、同時にいろんな世界を見てみたいと思うようになりました。

―― 今後チャレンジしていきたいことはなんですか?

直近では、海外を回りながら創作活動に打ち込んでいきたいです。VRアートの活動はどこにいてもできるので、いろんな国の文化や空気を肌で感じながら、その体験を表現に落とし込んでいきたいと考えています。また、VRアートはまだまだ自然界の物質が備えている温かみや情緒は表現できていません。それらのエッセンスをVR空間でも感じられるようにするのが、今後の目標でもあります。
遠い未来に「自分がこうありたい」という夢や目標は、あえて決めないようにしています。今の私が想像もできないようなことに取り組んでいてほしい、と期待しているからです。ただ、人々の想像力を解放していく活動は、いつまでも続けていきたいと思っています。

―― これから新しいステージへと踏み出す高校生に向けて、メッセージをお願いします。

「今あなたが思っていることを全部やったらいい」とお伝えしたいです。そして、やるなら早いほうが絶対にいい。早く経験すればするほど、未来の可能性は大きく広がると思います。もちろん、金銭面や時間の関係で難しいこともあるかもしれませんが、その場合でも可能な範囲で足を突っ込んでみるという行動力は大切にしてほしいです。

VRアーティスト
せきぐち あいみ さん

国内にとどまらず、海外でも活動の場を広げているVRアーティスト。アート制作やライブペインティング、NFTアートの制作・出品などの活動を通じて、数多くの作品を世の中に発表している。